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月刊 「医薬経済」連載記事ご紹介/精神科と耳鼻咽喉科による医療連携Bスポット療法という名の光明

当ホームページにて院長掲載誌として紹介させて頂いております以下ページ
https://aida-shika.or.jp/staff/#link01_b

私自身が月刊「医薬経済」へ連載している部分の原稿を本ブログにて少しだけご紹介していこうと思っています。
もしよろしければご覧になってみてください。


■今回は「精神科と耳鼻咽喉科による医療連携Bスポット療法という名の光明」から

精神科と耳鼻咽喉科による医療連携
Bスポット療法という名の光明


 1960年代、堀口申作教授の研究によって鼻咽腔炎と全身の関係が次々と明らかになり、治療法として開発されたBスポット療法は、九州・熊本の地でも精神科医と耳鼻咽喉科医の連携によって多くの患者を救ってきた。精神科医の寺岡葵氏(78)歳、耳鼻咽喉科医の宇野昭彦理事長(90歳)、宇野正志院長(56歳)に、医療連携の発端から今日までの経緯を伺うとともに今後の展望を検討したい。

不登校症例とBスポット療法
 寺岡氏は1979年に熊本市で精神科診療所を開業。2008年に閉院するまでの30年間、地域医療に従事し多くの患者の診療にかかわってきた。その中で、頭痛、微熱、倦怠感などの症状に悩む患者に対し、堀口申作教授の研究をもとにBスポット療法を試みることを思い立ったのは、日頃から私淑していた宇野昭彦氏の助言に基づいたものであった。
 最初の患者は、1996年中学生2年生の女子で、受診前の半年間、病院を転々とし慢性疲労症候群と診断されていた。当時の様子について、「病院不信という状態で最初はほとんど顔も上げませんでした」と寺岡氏は振り返る。
 初診時所見は、左側頭部拍動性頭痛、左肩部痛、扁桃肥大、自律神経症状、甲状腺軽度肥大、口角炎。臨床検査所見はTSH、抗核抗体がいずれも上昇。3ヶ月以上微熱(37〜38度台)が続いていた。
 寺岡氏は、患者に鼻咽腔炎の治療は痛みを伴うことを説明した上で、宇野耳鼻咽喉科に紹介。あわせて不登校という状態について学校側に理解を求める文書を持たせるなどの配慮を行い不安の軽減に努めた。
 宇野昭彦理事長が鼻咽腔に1%塩化亜鉛を塗布した結果、次第に疲労・倦怠感が消失、微熱も下がり生理痛もとれてほぼ3ヶ月で治癒した。
 「治療はとても痛かったのでしょう。右手をもぎとられるようだったと話していましたが笑顔が戻り、登校を再開しバレー部にも復帰することができました」という。寺岡氏は劇的に改善したことに大きな衝撃を受け、その後、中学生の不定愁訴に起因する不登校症例を紹介し、ほぼ同様の経過で治癒に至った9症例について2003年5月に症例報告をまとめた。(月刊保団連 2003.5 No785)

精神科プライマリーケアと鼻咽腔炎
 寺岡氏はその後、2004年3月までに受診した鼻咽腔炎105症例について、精神医学的状態像、臨床経過等を以下の6点にまとめ、2004年6月に症例報告した。寺岡氏は考察の中で、「上咽頭(鼻咽腔)には咽頭扁桃が存在しリンパ組織が富んだ部位であることから、自律神経症状を伴う、うつ病や神経症、原因不明の発熱、アレルギー性疾患や自己免疫疾患と、鼻咽腔炎の関係は、今後、各科領域で見直さなければならない重要な課題」と指摘している。
①鼻咽腔炎は、頭痛・頭重、肩こり、疲れやすさ、ゆううつ、微熱などの多彩な愁訴があり、該部への1%塩化亜鉛の塗布で診断と治療ができる。
②家族歴では、女性では、片頭痛の他に、橋本病、バセドー病、気管支喘息、糖尿病など自己免疫疾患が多くみられるが、男性では特徴はない。
③本人歴をみると、女性では、家族歴と同様甲状腺疾患が多い。
④臨床検査では、女性の甲状腺疾患を裏づける、抗TPO抗体陽性、TSH上昇などがみられ、男女に共通して好酸球増多の所見がみられる。
⑤塗布刺激による血圧の変動は、S´型+P´型が60%を占め症状の改善と共にN´型への移行傾向が見られる。(注1)
⑥鼻咽腔炎を合併した精神科領域の疾患、神経症、うつ病、薬物依存後遺症や橋本病などへの塗布療法は、原疾患にも好影響をもたらす。
※ 注1
S´型:塗布後の最高血圧が10mmHg以上を超え、15分後も持続するもの(交感神経緊張型)
P´型:塗布直後は上昇するが、15分後には塗布前血圧より10mmHg以上の低下を示すもの(副交感神経緊張型)
N´型:これらの変動を示さないもの(正常型)
(月刊保団連 2004.6 No825)

宇野耳鼻咽喉科のBスポット療法
 宇野理事長がBスポット療法を知ったのは、医事新報に掲載された堀口教授の論文を見たのがきっかけで今から50年ほど前のこと、寺岡氏から患者の紹介を受ける以前から鼻咽腔炎の患者にはBスポット療法を試みていた。しかし...
 「患者によっては非常に治療効果が高いのですが、当時大学の研究室にいた二人の息子に話しても、笑われるだけでまったく相手にされませんでした」という。二代にわたりBスポット療法を続ける現状について、理事長、院長は次のように話す。

理事長 鼻咽腔炎が疑われる患者には、経鼻および経口から鼻咽腔に1%塩化亜鉛を塗布します。痛みを我慢するよう話して治療を続けると4〜5日で症状が薄らいでくる。そうなると患者が進んで治療を受けにくるようになります。

院長 現在は内視鏡も使用していますが、あくまで炎症の有無を確認するためで、基本的な手技は今も父の時代と変わりません。

 症例によっては劇的な改善がみられることは認めるものの、鼻咽腔炎という疾患に対する認識、Bスポット療法の評価についてどのように考えているのだろうか。

院長 一般の耳鼻科医は、鼻咽腔炎という疾患があることはあるのだろうと思っていますが、器具を用いなければ見えない部位なので、積極的に診ようとはしません。加えて他の疾患との関連性を知らなければ、発赤があるからといって何か症状が出るわけではないということが頭にあります。

理事長 口蓋扁桃などであれば、痛みの部位を患者自身が意識して来院します。急性の副鼻腔炎も、ある程度は部位を意識することができる。しかし、鼻咽腔炎の部位を正確に把握していた患者は先ずいません。塩化亜鉛を塗布して痛みを感じ、初めてそこに問題があったことを知るわけです。

院長 鼻咽腔炎は、本当は赤いのか赤くないのか、どんなものが鼻咽腔炎なのか。Bスポット療法についても適応は何なのか、どのような症状の時にやるべきなのか、そういったことをひとつひとつ決めていかないと普及は難しいでしょう。私たちが同好の士のようにやっているのは別として、やはり学会等が定義をしてもらうことが必要ではないですか。

理事長 そもそも塩化亜鉛に消炎効果はあるのでしょうか。なぜ堀口教授は塩化亜鉛を用いることにしたのか。多くの場合、最初は非常に痛がるのに4〜5回目になるとほとんど痛みを感じなくなり症状も軽減してくる。そんなに早く効くはずがないと思うわけです。消炎効果があるなら他の粘膜の炎症にも塩化亜鉛を用いれば良いわけですが、そのような例は聞いていません。
効果があるからといって他の医者に勧めようにも、「なぜ塩化亜鉛を使用するのか」と聞かれたら答えようがない。寺岡先生の症例報告にもある通り、塗布後に血圧変動を示す例が多くあり、Bスポット療法は単なる消炎ではなく、刺激療法の側面が多分にあると思われます。

 ということで、Bスポット療法の優れた効果には信頼をおくものの、その病因が病巣感染という論に対しては、やや懐疑的である。
 Bスポット療法と病巣感染の関係については(注2)を参照されたい。

病巣感染のメカニズム(注2)
 Bスポット療法の考案者である堀口申作教授は慢性上咽頭炎の研究を進め、頭痛、めまい、肩こり、不眠、疲れやすい、微熱、食欲不振、咽頭部の異常感、などの症状が、Bスポット(上咽頭部)における炎症が原因となるケースを紹介しているが、現在、理解されているメカニズムは以下の通りである。
 「呼吸時にウイルスや細菌が体内に侵入すると、上咽頭の粘膜中のIgAが侵入を食い止めようとする。止めきれないウイルスや細菌が深部に侵入すると、粘膜中の繊毛上皮が全身への伝達役になり、マクロファージや好中球が上咽頭部でさらに侵入を妨げようと働く。さらにHT(ヘルパーTリンパ球)が感知し、CT(サイトトキシックTリンパ球)、IgA、IgGに働きかけてウイルスに作用する。ところが、必要以上に活性したCT、IgA、IgGは上咽頭から血管内に入りこみ、CTは血管内のマクロファージや好中球をともなって健全な細胞を傷つけ、IgA、IgGは臓器に付着する。これらが腎炎、皮膚炎、関節炎など自己免疫疾患を起こす原因の一つになる。」
 上咽頭で起こった感染や炎症に風邪やストレスが加わってリンパ球が暴走すると、他の部位の炎症を引き起こすというわけである。

Bスポット療法とIgA腎症
 堀口教授の研究を知った内科医の堀田修氏(現・日本病巣疾患研究会会長)は、「慢性上咽頭炎がIgA腎症などの免疫病と深い関係があるに違いないという、確信に近い予感を覚え」Bスポット治療を試みた。
 上咽頭部に塩化亜鉛を塗布して炎症を抑える治療を始めたところ、「扁摘パルス療法」では消えなかった血尿や尿タンパクがつぎつぎ寛解した。そこで、同様の患者や風邪をきっかけに再発した患者を調べたところ、ほとんどの患者が激しい慢性上咽頭炎を持っていたことが明らかになった。さらに、塩化亜鉛を塗り始めるとIgA腎症だけでなく、ネフローゼ症候群の患者まで再発しなくなることもわかった。
 上咽頭は鼻から入った空気が滞留し、細菌やウイルスに感染しやすい部位である。表面の繊毛上皮細胞には常に粘液が分泌しており、細菌などの異物をタンとして排出する働きがある。免疫反応をつかさどるリンパ球が表面に露出していて常に活性化している上咽頭は、体の中でも非常に特殊な部位なのである。
 塩化亜鉛を塗布して炎症を止めることによって、頭痛や肩こりが解消された例も少なくない。「頭痛は上咽頭炎の関連痛と考えられ、肩こりは慢性上咽頭炎による首と肩の緊張が改善された」と推測した。
 堀田氏は、「慢性上咽頭炎という概念とその治療が、耳鼻咽喉科といった科を越えて、腎臓、皮膚、腸といった全身のさまざまな病気に苦しんでいる患者さんの光となり、多くの人々の健康に貢献するはずだと確信しています。自分なりの方法でこの慢性上咽頭炎の概念を広めていくことは、医師としての自らの使命の一つとさえ思えるのです」と話す。
※注2:「医者は口を診ない、歯医者は口しか診ない」(相田能輝著)より。

不定愁訴を救え〜精神科医の提言
 寺岡氏は30年にわたり精神科に訪れる患者の診療にあたる中で、鼻咽腔炎の疑いを見極め、Bスポット療法を紹介することによって多くの患者を救ってきた。「精神科的な症状の方が効く割合は高い。寺岡先生に紹介されて治った人は多かった」と宇野院長は話す。寺岡氏が重視し、今後の治療を危惧するのは不定愁訴の患者である。

寺岡 今後、精神科医がどのようにして不定愁訴の患者に対応するかが大きな課題だと思います。時代とともにDSM-Ⅲ、DSM-Ⅳ、DSM-Ⅴ(注3)と診断基準が変わりマニュアル化され、DSM-Ⅴでは心気症という診断名は廃止されました。このことで精神科医が患者の訴えを丁寧に聞かなくなり、触診、打聴診もおろそかになり、甲状腺機能低下症などの症状精神病の患者等を見落としがちになったことは否めません。(注3)精神疾患の診断基準
私のところは町の小さな診療所で精神科と神経科しか標榜していません。そこに来られる患者さんのうち鼻咽腔炎が明らかになった患者さんだけで百数十例あるわけですから、潜在的に困っている方はかなりいると思われます。皆さん疲労困憊という様子で、甲状腺疾患など内分泌系と関係がある他の疾患と合併したケースもあります。医療連携がしっかりできればいいのですが、患者の訴えがあっても現在の臨床検査ではすぐに結果が認められないと異常なしとされてしまうことが少なくありません。甲状腺機能低下に合併する鼻咽腔炎もその一つだと思います。せめて県内の精神科医だけでも認知を図りたいのですが、鼻咽腔炎について精神科医はいまのところまったく無視という状態です。

 寺岡氏の悩みは深いが、「最近は寺岡先生以外の精神科医の方からの紹介も来るようになりました」と宇野院長は言う。今後、Bスポット療法が普及する兆しはあるのか。

院長 最近になってBスポット療法の問合せが増えています。当院ではPRしていませんが、インターネットによって知る方もいるようです。一番多い主訴は微熱や倦怠感などで、中にはIgA腎症の方もいました。不定愁訴で悩まれている方の間に少しずつ広がり始めているのだと思います。

寺岡 昔、堀口教授の論文を読み、宇野先生の治療の結果を見て素晴らしいと思い、ぜひ堀口教授にお会いして教えていただきたいと手紙を出したのですが、1年前に亡くなられたとのことでした。すぐに行けば良かったと今でも思っています。直接お話を聞きたいと思わせるほど優れた論文でしたから、なぜ耳鼻科医の方たちが評価しないのかという悔しい思いがあります。やれば結果が分かる治療なのですから。

院長 現状では医師の側からBスポット療法を勧めるだけの材料が揃っていません。慢性鼻咽腔炎そのものの定義がはっきりしていませんし、治療効果が病巣感染に由来するのか刺激によるものなのかも分かっていない。そういう状態でやってみましょうと言ってもなかなか付いてきてくれないように思います。患者さんから問合せが来ているわけですから早く基準が欲しいのは事実です。

 Bスポット療法は、不定愁訴という名の迷路に入り込んでしまった多くの患者を救う方法のひとつになりうるのか。
 寺岡氏は2003年3月から2007年5月までの期間に受診した50症例について、2014年6月に症例報告を行った。その末尾で示した共同研究者の宇野院長からの提言は、一人の医療人の魂の叫びとしてまさに胸を打つ一文である。その要旨をここに紹介する。

 本稿を目にする耳鼻咽喉科医に切に願うことは、耳鼻科として周知の病名である「鼻咽腔炎」であるにも関わらず、精神的なアプローチであるという理由のみで、本稿を看過されざることである。ここに列記された症例は、あくまで精神科的なそれであり、初診として耳鼻科を受診することはおよそないと思われる症例である。しかし、その中を注意深くみると頭痛、頭重感、めまい等、耳鼻科の愁訴として頻繁に認めるものが散見されることに気づくはずである。
 鼻咽腔炎は耳鼻科医に周知と書いたが、ファイバーが普及した現在においても、鼻咽腔炎は積極的に疑うことなしには省みられることが少ない疾患であることに異論はないだろう。しかし、共同研究者の宇野は2代にわたって主著者の寺岡と共同で鼻咽腔炎の診察研究を行っており、その経験から照らして見ても、鼻咽腔炎が関与する耳鼻科的な愁訴が無視できぬほどに存在すると痛感している。その愁訴は必ずしも解剖学的な鼻咽腔炎とは直接的な関係の乏しい部位におこることもあり、まさに疑うことなしに省みることのないものである。例えば、ここに取り上げられた症例の他に、著者は不明熱、耳鳴り、顔面痛、めまい等に鼻咽腔炎が奏功した症例を経験している。
 一旦、鼻咽腔炎からの症状と判明し治療を開始すると、効果は劇的であり、該部への処置のためだけに、他県から連日、数時間を費やして通院することも厭わない例を度々経験する。また、本人への同処置が著効したために、十数年の時をおいて子どもに同様な症状があり処置を受けさせたいと来院された親の例もある。耳鼻科医の一般診療の中で、ある疾患に対する加療に比して効果が乏しい時、由来不明の症状に関して、その一部には鼻咽腔炎が関わっている可能性が少なからず存在すると思われる。治療半ば、その効果に迷った時には、ぜひ鼻咽腔炎のことを思い起こしていただきたいものである。(月刊保団連 2014.7 No1166より)

 寺岡氏は2008年に臨床の現場から退いた。精神科医と耳鼻科医が連携し、Bスポット療法によって多くの患者を〝不定愁訴〟という名の迷宮から救い出した事例はおそらく世界でも例のないことであろう。一日も早く後継者の登場が望まれる。

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